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映画レビュー:アルキメデスの大戦

評判がいいので観てきました。

開始直後のVFXの迫力は凄かった。あまりにリアルで、感情が持って行かれてしまい、「私の息子達を無駄死にさせた政府を許さない」とか思い始めてました(笑)。

 役者さんたちの演技もよかった。菅田将暉さんの情熱的な演技には好感が持てます。また、脇を固める俳優陣の間の取り方が最高でした。

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アルキメデスの大戦

 

 難を言えば、戦艦大和の建設秘話「負け方を知らない日本人に、負けを覚悟させるには、不沈と詠われたヤマトが沈むのを見せるしかない」という論法。いやいやいやフィクションにしてもヒドすぎる(実話じゃないのよね?)。こんな論法、怒りへ着火させる以外に何があるのだろう。国を守るためヤマトを作るのだー!と言ってくれたほうがまだマシです。

 

負けを悟っているなら、戦争を終わらせる方法を考えることが先決と思うのは浅はかなのだろうか?海に沈め乗組員を無駄死にさせるためだけに何億もの軍事費を使おうなんて、当時の軍部はやはり狂気に飲まれ、冷静な判断が出来る人がいなかったと言わざるを得ないです。

 

天才数学者の平和への志を描いた物語なのかと思ったけれど、「机上の船を実際に航行させてみたい」という野望に、「建造して沈めるのは戦争を終わらす為だ」という悪魔の囁きが後押しになったことで、平和への志などあっけなく消えてしまう。

 

そんな「一部の狂気に牽引された日本」を見せられて終わるという、なんとも後味が悪く救いのない作品でした。個人的には観なければよかったというのが感想です。アニメの映画化らしいけど、作者は何を伝えたかったんだろう。私が受け取ったのは「野望は、判断も真心も奪ってしまう」ということ。平和という隠れ蓑を着て大義を得た野望は始末が悪い。真心を失った大義など空虚だ。

 

映画が娯楽作品であるなら、真心の通った部分も見せてほしいところです。ネガティブな部分だけ見せつけられて終了というのはあまりに芸がない。ヤマトを見送る若者という、ちょっと哀愁のあるラストにしてるけど、コチラ的には「で?」っていう尻切れ感がハンパなかった。迫力のVFXが泣いてしまうよ。マーベルが大成功してるのは、作品の真ん中にそういう大事なものが必ず貫いているからだと思います。なんかもうホント邦画ヤダ。