映画レビュー:her/世界でひとつの彼女
AIに恋をするお話です。
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監督 スパイク・ジョーンズ
主演 ホアキン・フェニックス, エイミー・アダムス, ルーニー・マーラ
未来のロサンゼルス。セオドアが最新のAI(人工知能)型OSを起動させると、画面の奥から明るい女性の声が聞こえる。彼女の名前はサマンサ。AIだけどユーモラスで、純真で、セクシーで、誰より人間らしい。ありえないはずの恋だったが、親友エイミーの後押しもあり、セオドアは恋人としてサマンサと真剣に向き合うことを決意。しかし感情的で繊細な彼女は彼を次第に翻弄するようになり・・・
セオドアのように、AIと恋するって・・・
☑ ありえない
□ 興味はある
□ わからない
大半の人が「ありえない」を選択すると思うし、セオドアもそう思っていました。でも、恋に落ちた。そしてそんな「AIと恋をすること」をやっと受け入れたセオドアは、巷の恋人同士と同じように楽しい期間を味わいます。
AIサマンサが「私たちにはふたりで撮った写真がないから」と、自分で作った曲を披露します。音楽が写真の替わりという訳です。舞い散る桜ごしに青い空を透かしみたような美しいインストです。
肉体のあるなしは、恋人同士には取るに足らない問題でしかなかった。それどころか、肉体がないからいつでもどこでも一緒にいれる、とサマンサは夢見心地に話します。
浮気?身勝手?
好奇心旺盛なサマンサは、ある日、哲学者のAIアランと交流を深め、新しい感情を知っていきます。
ここが「浮気者」とか「身勝手」とかのブーイングが出るシーンだと思うのだけど、サマンサにとってそれは邪なものでもなんでもなく、「進化」なんだよね。哲学者アランの言葉を引用するなら「停滞こそ苦痛」。進化成長していくのが、自然な状態なのだと。
サマンサはOSなので、セオドア以外に同時に話している人は8300人、その中で恋人関係なのは641人。それを知ったセオドアは独占欲と嫉妬に狂います。
心は四角い箱じゃないわ
愛すれば愛するほどふくらむの
ワタシはあなたとは違う
何人いてもあなたへの愛は深まるばかりよ
いや違う、僕のものか、そうじゃないか、だ
違うのセオドア
あなたのもので、皆のものなの
どんな魂にも進化の段階があるように、愛するという行為にも進化の段階がある。相手を独占したいのは、「ひとりぽっちになりたくない恐怖」があるから。それを癒したとき、次の段階に進む。
AIサマンサが居る場所は、そんな恐怖のない場所。愛は勢いよく拡大し、人にも自然にも強烈な愛を感じるようになる中で、愛する人への愛も深まっていく。ポリアモリーっていう概念が近いかな。
セオドアは、「愛してるなら、普通こうするだろ?」という自分流の愛し方を押しつけていたことに気付きます。これがこの作品の肝かな。
私の想像する愛は・・・
愛する人が空を見上げることが嬉しくて
小さな虫を見つけて寄り目になって凝視してる様子が嬉しくて
試合に負けたと悔しがる様子が愛おしくて
昇給したと得意げな顔に吹き出して
好きな子が出来たと顔面蒼白の告白も、なんだかんだ許せてしまう
私を見つめる眼差しは熱を失うけど、その眼差しの先にある人と上手くいってほしいと願う
結局のところ、愛する人が生きてるだけで嬉しい
たくさんの経験をしてほしい、いろんな地球をみてほしい
その為にはなんだって協力するよ
ひとことで言えば、『相手を自由な状態にしておくのが愛』だと思ってるけど、これを相手に押しつけてしまうと上手くいかないのね。相手には相手の愛し方がある、と尊重することは、愛のネクストレベルと言えるのかな。
※但し、自分の尊厳を守れない場合は除く。例えば、独占欲を丸出しにすることが相手の愛し方だった場合、独占されることが楽しいならいいけど、自分の尊厳を侵していると感じてしまうなら離れるしかないということ。
愛って契約でしょ?
恐怖や不安を濾過した純度の高い愛とはなんぞや?という世界を、スパイク・ジョーンズは見事に描いたな~と思います。不倫騒動の多い日本にいると、愛って契約でしょ?って勘違いしやすい風潮を懸念していました。
とはいえ、不倫騒動がもたらすのはやっぱり「愛とはなんぞや?」という考察や熟思だと思うので、それはそれで意味のあるプロセスなんだろうね。一定数が答えを見出し、契約としての結婚制度が崩壊するまでは、この騒動は激化していくと思うな。話がそれた(汗)
恋人がAIである必要性
監督スパイク・ジョーンズの伝えたかったことは上記したとおりだと推察しますが、恋人がAIである必要性はなんだろう?
生身の女性に比べると、どんどん進化していく
生身の女性であっても、人であれば変化成長していくのは当然のことで、AIとなるとその進化のスピードはもっと顕著になりましょう。昨日、愛してると耳元で囁いてくれたけど、今日はもう別の恋人に夢中かも知れない。そんな変化を丸ごと受け入れられますか?という監督の挑戦かな。
肉体がない相手と恋に落ちる可能性
大半の人はNO WAY!ありえない!と言うと思いますが、個人的にはアリだと思ってます。
肉体をもっているのは地球人くらいで、宇宙を見渡すと地球人であることのほうが稀少です。しかも、地球人でいられるのは80年くらい。その期間を過ぎると人は肉体を失い、魂というエネルギー体に戻ります。
私たちの意識は今、どんどん拡大していて、地球単位ではなく宇宙をベースに物事をみる日も近い。そして肉体のある3次元という限られた次元から、もっと上の次元のエネルギーを体感する人も増えています。人はエネルギー体であると科学が証明した今、次なる時代の下準備としての意識改革を果たした作品ともいえるんじゃないかな。
* and so on *
近未来のロスではハイウェストのパンツが人気(笑)
道行く男性のほとんどすべてがアースカラーのハイウェストパンツ。スパイクジョーンズは流行のローライズにイラついているのでしょうか(笑)。流行なんてあっというまに変化するのさってトコかな(笑)
この右のオタク、よく見たらクリス・プラットよ!!!!
ジュラシック・ワールドでがちムチイケメンだったあのクリスプラットよ!
ガーディアン・オブ・ギャラクシーで、 ちょっとオモロイ ヒーローのあのクリスプラットよ!
あまりのダサさに気付かなかった人も多いのではー(笑)
サントラが美しすぎる
上に貼ったのは、Baech という曲と、Photograph という曲。どちらも、静かに満ちてくるような「ふたりでいることの幸せ」を表現しています。作曲はOwen Pallett氏。作曲賞にノミネートされました。女性の感性をとてもよく表してると思う!
AIの声は、あのひと
ちょっとハスキーな声。それだけなのに「セクシーでチャーミング」な演技ができるってスゴイ。声だけのラブシーンも然り。あまりに魅力的で私が恋しちゃいそうだよ!w ここはネタバレしないほうがいいと思うので、敢えて伏せておきます。
フェイバリット度 ★★★★☆ 大好きレベル
サントラ美麗度 ★★★★★ 作曲はOwen Pallett氏。
予算度 ★★☆☆☆ 単調なシーンが多いのは、主題にフォーカスしやすくさせるため?