映画レビュー:博士の愛した数式
邦画は、うまく感情移入できない事が多いのであまり見ないタイプなのですが、P友さんの巧みな誘導でうっかり観てしまいました。数式をモチーフにしたとってもロマンチックな作品です(算数が苦手な私でも楽しめましたw)。
Amazon プライムで無料配信 117分
不慮の交通事故で、天才数学者の博士は記憶がたった80分しかもたない。何を喋っていいか混乱した時、言葉の代わりに数字を持ち出す。それが、他人と話すために博士が編み出した方法だった。博士のもとで働くことになった家政婦の杏子と、10歳の息子。博士が教えてくれる数式の美しさ、キラキラと輝く世界。母子は、純粋に数学を愛する博士に魅せられ、次第に、数式の中に秘められた、美しい言葉の意味を知る―。
監督:小泉堯史 主演:寺尾聰, 深津絵里, 齋藤隆成、浅丘ルリ子 原作:小川 洋子
2006の作品なのでネタバレ気にせずどんどん行きますので、観たくない方は目をつぶってください!
▆ れん的ポインツ♥
何がロマンチックかって、やはり友愛数でしょう!友愛数とは220と約数の和が284になり、284の約数の和が220になるという奇遇!滅多にない組み合わせの数字だそう。
220の約数:1、2、4、5、10、11、20、22、44、55、110 ⇒すべて足すと284
284の約数:1、2、4、71、142 ⇒すべて足すと220
寺尾聰博士の言葉を借りるなら
神の計らいを受けた絆で結ばれた数字なんだ
美しいと思わないかい?
これほど見事なチェーンで繋がるなんて。
こんな言葉、初老のお爺が言う?!ずっきゅん射抜かれた~。まさに枯れ専のサピオセクシャルをピンポイントで狙ったかのような狙撃率。ちんだ(笑)。これって、『月が綺麗ですねby夏目漱石』と並ぶロマンチック決め台詞なんじゃないかちら。世の男性諸氏の皆様には是非こんな口説き文句を乱用して頂き、成果報告を聞かせてもらえると嬉しいです(笑)。
Wikiによると、他の友愛数はこんな感じ。無理にでもこじつけて、星を見ながらサラリと呟いたら狙撃率はグンと上がると思われます。
(220, 284), (1184, 1210), (2620, 2924), (5020, 5564), (6232, 6368), (10744, 10856), (12285, 14595), (17296, 18416), (63020, 76084), (66928, 66992)
▆作品のモチーフとなってるのは
数学畑の皆さんが美しいと絶賛するオイラーの等式。全く関係のない分野から出てきたこれら3つの値が、「eiπ + 1 = 0 」というシンプルな1つの式で繋がる事に、数学がわかる方には途方もなく深遠な美しさを感じさせるようです。
●幾何学で用いられる円周率 π は、どこまでも続いていく数字
●代数学で用いられる虚数単位 i は、想念の世界に存在する「愛」
●解析学で用いられるネイピア数 e もどこまでも続いていく数字
▆ 数式に暗示された博士の心境の変化
道ならぬ恋で失った小さな命を、博士は忘れられませんでした。博士の心境はこんな数式で表されました。
eπi = -1
マイナス1は、欠けてしまった心。満たされない心でしょうか。小さな命を惜しんでいるシーンで出てくる数式なので、生まれ落ちることのできなかった小さな命を表現してるのかもしれません。
でも、家政婦とその子供との交流を通じて、博士の心は変化していきます。
eπi +1 = 0
イコールの右にあった1が、イコールの左に移動しました。博士に新しい子ができたという意味ではありません(笑)。でも、博士は交流を通じて、なにがしかの「1」を得ました。そして、答えはゼロになる。作中ではこのゼロを「無に抱きとめられる」と表現しています。哲学的。
そう、哲学的なのです。哲学とはまったくの畑違いの数学博士の言葉が哲学になってる、っていうのが私的にはシビレてね。数字は哲学だと言えるのではないか!と激しく興奮してしまったのです(笑)。
人が出現するずっと以前からあったといわれる数字。もしかしたら、それは宇宙を数字という側面で表したものなのかもしれません。スピオタの私が、宇宙を哲学で定義するように、博士は数字、古代の人々は古代文字で、それぞれ得意な分野で定義したものなのかもしれないね~。
で、宇宙を平たく訳すると「愛」だと私は思ってます。「無に抱きとめられる」とき、人は愛と同化する。常識やお金という枠の中では到底感じることのできない安堵や至福を体感するんだと思います。80分しか記憶が保てなくても、博士はそれを体感し、大事なのは「今」を感じきることだと結論します。スピど真ん中なセリフすぎてビビる(笑)。むしろ記憶は邪魔になるものなのかもしれないね。
▆ 「今」を感じきってる博士の名言集
◯君が料理を作ってる姿が好きなんだ
◯何でも食べられるんだなぁ(野草を摘んでいるシーン)
◯あじけのないドリルの問題が一編の詩のように聞こえた
(10才のルートがドリル問題を暗唱した時の感想)
◯この手のぬくもりだけで・・・・
「今」を生きると、感情をまっすぐ言葉に出すのか、博士が子供っぽく可愛く見えてきて仕方なかった。左脳派の人の、右脳な発言にギャップ萌えしてるだけですか(笑)
▆ 役者さんたち
爽やかな深津絵里さんもヨカッタけど、寺尾聰氏の自然な説得力はさすが。子供を見る暖かい眼差しとかシミジミした演技がばっちりはまってました。公開当時は59才で、役どころもしょぼくれた感じだったけど、野球のシーンでは40代と言っても通用する運動能力感で、関節とか筋力とか全然問題なさそう←そこ?w
▆ オススメ度数どすぅ
枯れ専度 ★★★★☆
サピオ度 ★★★★★
感情移入度 ★★★★☆
物語の起伏度 ★★☆☆☆
怪獣・ロボット度 ☆☆☆☆☆
カーチェイス度 ☆☆☆☆☆
度肝を抜くCG度 ☆☆☆☆☆
▆ 似てる作品
我が心の父モーガンフリーマンの枯れた心に芽生えるかすかな恋っていうのがツボ♥
※ 現時点ではAmazonプライムでは見れません
監督 ロブ・ライナー
主演 モーガン・フリーマン, ヴァージニア・マドセン, キーナン・トンプソン
※注意:似て非なる「最高の人生の見つけ方」は、ジャック・ニコルソン&モーガン・フリーマン。コチラもいい作品です